光照射による神経細胞の活動電位変化 神経細胞のイオンチャネルの活動を、光照射でコンホーメションを変化させる光感受性の人工化学物質を用いてコントロールする系を開発した。グルタミン受容体(iGluR6)は神経細胞のシナプス部位に強く発現し、神経発火の頻度を制御しているイオンチャネルである。UV領域の光でシス体となり、可視領域の光でトランス体となるアゾベンゼン構造を骨格にもち、システイン(Cys)に水素結合するマレーマイド(のりしろ)構造体とiGluR6受容体のアゴニストであるグルタミン酸を両方結合させた新規化学物質(MAG)を合成した。iGluR6のリガンド結合部位のまわりに化合物の接着部となるCys変異を導入した変異体と化学物質MAGの組み合わせにより、異なる波長の光照射で、細胞膜の電位・神経細胞の活動を可逆的に変化させることに成功した。具体的には、UV領域の光照射で受容体が開き、可視光で閉まるという光反応性をしめす組換LiGluR受容体や、反対にUV光で受容体が閉まり、可視光で開く反応を示すYin/Yang受容体を見出した。この実験系はゼブラフィッシュなどの生体内でも機能し、外部からの照射光により神経活動・行動を調節できることが示された。このLiGluR受容体やYin/Yang受容体をもちいて、SCNペースメーカー神経の神経活動を光照射で直接操作することで、哺乳類概日リズムをコントロールしている。 主な業績 1Allosteric control of an ionotropic glutamate receptor with an optical switch. Volgraf M, Gorostiza P, Numano R, Kramer RH, Isacoff EY, Trauner D. Nat Chem Biol., 2, 2006, p47-52 2Remote control of neuronal activity with a light-gated glutamate receptor. Szobota S, Gorostiza P, Del Bene F, Wyart C, Fortin DL, Kolstad KD, Tulyathan O, Volgraf M, Numano R, Aaron HL, Scott EK, Kramer RH, Flannery J, Baier H, Trauner D, Isacoff EY. Neuron, 54, 2007, p535-545 3Mechanisms of photoswitch conjugation and light activation of an ionotropic glutamate receptor. Gorostiza P, Volgraf M, Numano R, Szobota S, Trauner D, Isacoff EY. Proc Natl Acad Sci U S A, 104, 2007,p10865-10870 4Nanosculpting reversed wavelength sensitivity into a photoswitchable iGluR. Numano R, Szobota S, Lau AY, Gorostiza P, Volgraf M, Roux B, Trauner D, Isacoff EY. Proc Natl Acad Sci U S A, 106, 2009,p6814-6819 キーワード LiGluR受容体、Yin/Yang受容体、アゾベンゼン構造、MAG、iGluR6、UV光で、可視光 このテーマに詳しい学生
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